栄養と効果


寒天が便秘にきくことは知られていますが、生活習慣病予防にも効果があることが明らかになっています。
こうした効果は寒天に含まれる食物繊維によるものですが、最近注目されているのは、寒天の生理活性作用です。
最新科学によって明らかにされた寒天の効用をご紹介しましょう。


寒天は食物繊維の宝庫。
角寒天100g中74.1gと、食物繊維の含有量は全食品中のトップです。
ただし、1食分に使う量は2g程度。
寒天2g中の食物繊維は1.5g弱。

この食物繊維の量は、ごぼう30g弱、ゆで大豆なら20gにすぎませんが、それでも便秘解消に高い効果が得られることが実証されています。
札幌医科大学が、便秘を自覚する女子大生29人に寒天を毎日2g摂取させたところ、75%の人で便秘が解消されたと報告しています(『臨床と研究』75巻98~102ページ、1998)。
たった2gでも便秘が解消されるのは、食物繊維の強い保水力によるものです。
食物繊維は体内に入ると250倍もの水分を吸って膨張します。

しかもその水分は胃や小腸では吸収されないまま大腸に到達するので、便を増やすとともにやわらかくして、排泄効果が得られるというわけです。
また体内で250倍にもふくらむ食物繊維は、満腹感ももたらすので、食べすぎを防ぎ、肥満解消にも効果的です。


食物繊維は血糖値の上昇をおさえる効果があることが知られています。
これは、食物繊維を一緒にとると、食物が胃から小腸への移動に時間がかかり、血糖値の上昇がゆるやかになるためだとされ、食物繊維を長期間とり続けると、インスリンの感受性が高まって、ブドウ糖の代謝が高まるという報告もあります。

こうした食物繊維の作用は、おもに水溶性食物繊維にあると考えられています。
寒天の水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の割合は算出されていませんが、水溶性食物繊維が多いというのが一般論です。

実際に、糖尿病患者の治療に寒天を利用した臨床試験の報告があります。
前田一氏が第60回公衆衛生学会で報告しています。
3か月間、通常の食事療法行った群と、食事療法に毎食寒天をプラスした群を比較した結果、肥満度を示すBMIも、空腹時血糖値も、寒天併用群のほうが低下率が高かったといいます。
長期的な血糖コントロール機能に反比例する糖化ヘモグロビンも、食事療法だけの群では変化がなかったのに対して、寒天併用群では低下し、血圧や血清コレステロール値も改善したと報告しています。
食物繊維に血清コレストロール値を下げる作用があることは、すでに定説になっています。
メカニズムはよくわかっていませんが、水溶性食物繊維が余分な脂肪をからめとって排泄を促すことと、腸内で胆汁酸を吸着して再吸収を妨げるためだろうと考えられています。

血圧低下作用については、水溶性食物繊維の中でもこんぶやわかめなどに含まれるアルギン酸に高いとされ、寒天独自の作用としては報告されていません。
ただ、高血糖や肥満は高血圧の大きな要因なので、血圧も低下したのは、血糖値や肥満度が下がった結果だと考えられます。
肥満、高血糖、高脂血症、高血圧は相乗効果で動脈硬化を促進し、心疾患や脳血管障害などを引き起こします。

これをメタボリックシンドロームといい、寒天を日常的に食べていれば、相乗効果で予防効果が上がるとみられ、生活習慣病の強力な予防食だといえます。

 

「かんてんレシピクラブ」 (女子栄養大学出版部)より